トライアンフ・ボンネビルT140
海外メーカー60年代、市販車最速と言われ、人気を博したトライアンフ・ボンネビルですが、1969年にホンダCB750が発売されると、その地位を脅かされる様になりました。
実はトライアンフは、60年代初頭より、ボンネビルを超える次期モデルの開発に着手しており、65年頃には、新型の並列3気筒モデルは、かなりの完成度を見せていたにも関わらず、会社の都合から、その開発は一時棚上げされてしまい、結局市販されたのは、68年になってからでした。
その新型トライアンフ・トライデントの最大の悲劇は、翌年、あのホンダCB750が発売された事に尽きます。
もう数年早く発売出来て、CB750のモデルチェンジに合わせて、第二世代目にバトンタッチできていれば、或いは歴史は違っていたのかも知れません。
軽量な車体と操縦性を持ったトライデントは、レースでの活躍とは裏腹に、並列4気筒、ディスクブレーキ、セルスターター等、目新しさの固まりのホンダに比べ、OHV3気筒とセールスポイントに欠け、しかも割高な価格も手伝って、市販車としては不振を極めました。
そんな中で、トライアンフが行ったのは、従来のボンネビルの改良?でした。
先ずは71年、フレームが一新されています。フレーム内にオイルタンクを内蔵したこの新型フレームは、ソレまでのトライアンフの精悍なプロポーションを、完膚なきまでに破壊しました。
更に73年には、排気量を750ccまでアップしています。
これは、日本製のナナハンに対抗したものなのでしょうが・・・。
トライアンフといえば、軽快な吹け上がりが売りのバイクであったものの、排気量の拡大は、その軽快さをスポイルし、ユッタリ走るバイクへと変貌したのです。
元々500ccがベースであったボンネビルのエンジンですが、それを650、最終的には750へと拡大していった訳ですが、同時に強度不足を心配して、圧縮比も下げられており、馬力でも650を下回っています。
写真のソレは、前後ディスクブレーキが装着されているので、76年以降のモデルでしょう。
このディスクブレーキも、余り良い評価は無く、更に80年にはセルスターターが付きますが、コレも悪名高いモノとして有名です。
70年代のトライアンフは、ブリティッシュ・レイランドと同様、合併による経営の混乱もあり、必要な製品を、必要な時期に投入する力は既に無く、60年代、アレだけ人気を得たボンネビルを改悪し続けました。
そして、1983年には倒産し、一旦姿を消すことになりました。
現在バンクーバーで見かけるバイクで、特に目に付くのが、新型のトライアンフ・ボンネビルです。ここ数年で急激に数が増えた様で、コチラでもレトロスタイルが人気を得る様になったのでしょう。
ソレに比べると、旧ボンネビルを目にする事は非常に稀で、それは、高速走行で120キロ以上でのクルージングを考えると、やはりムリがある…という所なのかも知れません。
この750は、正直余り良い印象が無いのですが、現行トライアンフの巨大さからすると、むしろ良い雰囲気に見えますね・・・。
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