シボレー/トヨタ・キャバリエ Chevrolet/Toyota Cavalier 日米貿易摩擦編
シボレー先代モデルはコチラ:http://blogs.yahoo.co.jp/hiro_hosono15oct/968641.html
1992年春、時のアメリカ大統領、ブッシュ父が来日しました。しかも、民間人であるアメリカビッグ3のCEO3人を連れ立って、自動車の押し売りに来るというのは、正に前代未聞といえる出来事でした。
湾岸戦争に勝利して、一時的に驚異的な支持率を得たブッシュ氏でしたが、景気の冷え込みに対しては何ら打つ手が無く、GMが120億ドルという天文学的な赤字を計上する等、自動車業界は苦境に喘いでいました。
そこで同年11月の選挙を睨んで、日本叩きを政治パフォーマンスとして利用したのです。
それから暫く経った頃、GMが、トヨタと共同で新型の小型車を開発するというニュースを目にしました。曰く、アメリカでは、次期シボレー・キャバリエとして、そして日本でも、同型の車がトヨタから販売されるということでした。
1.トヨタの品質を持ったアメリカ車。
2.アメリカ車の乗り味とデザインを持ったトヨタ車。
どちらにしても、コレは面白い!と胸をはずませたものでした。トヨタ車は幾ら品質が良くても、決定的にデザインと乗り味の面で面白みに欠けているからです。
そして94年、日本に先立ってアメリカで次期キャバリエ、そして兄弟車のポンティアック・サンファイアーが登場しました。写真で見たところ、極平凡で特に魅力を感じませんでしたが、翌年、日本で発表されると、各メディアは、「ハッとする程美しいスタイル」と書き立てました。恐らく実物は・・・と期待したのですが、実物の印象も、写真と全く同じ、極平凡な車でした。
しかも、日本に用意されたのは、DOHCエンジンのみで、コレは整備性の悪さ、信頼性の無さで、北米では敬遠されているエンジンでした。そして部品代も高く、内外装の質等、車の出来と言う意味でも、全く日本車の足元にも及ばない車でした。
結局「トヨタの品質を持ったアメリカ車」では無く、「アメリカ車の品質を持ったトヨタ車」でしかありませんでした。
一つ弁護するとしたら、シボレー・キャバリエに比べると、トヨタの方が、パネルの隙間が揃っていました。
そのトヨタの販売力を以ってすら、全く販売は振るわず、殆どの車が警察等、政府機関に安く卸されましたが、リースの終了すると、全く下取り価格が付かず、その殆どがニュージーランドに輸出されてしまいました。
当時、アメリカの言い分は、日本の市場は閉鎖的で独自のディーラー網を築き難く、それがアメリカ車の販売の障壁になっているというものでした。
そこで、日本一の販売網を持つトヨタが、日本車とほぼ同じクラスのキャバリエを、日本車よりも割安な価格で販売したところ、ソレが全くダメということで、図らずしも、アメリカの言い分が、単なる言いがかりに過ぎないということを証明してしまったのです。
余りに筋書きが良く出来過ぎているので、裏で日本政府が噛んでいるのでは?と疑いたくもなる出来事でした。本当に販売を第一に考えるのなら、普通なら、サイズや価格云々以前に、もう少し、日本車に無い魅力を持った車種を選ぶと思うからです。
その後、鳴り物入りで登場したサターンも全く振るわず、直ぐに撤退となりました。
フォードは、旧オートラマをマツダから買い取り、積極的にディーラー網を拡大したものの、日本で売る車が無く、尻つぼみになりました。
クライスラーも、ホンダが販売し、一応の成功を収めたジープの販売を一手に受け持ったものの、販売力の無さから、人気を維持する事は出来ませんでした。
現在、アメリカビッグ3の経営状況は、正に壊滅状態ですが、既に日本市場に関しては諦めている様で、日米貿易摩擦が再燃する気配は見られません。
写真:シボレー・キャバリエ。2005年10月、インディアナ州グリフィスにて。シカゴにてレンタルしました。10万マイルは越えていましたが、ソレを差し引いて考えても、シートも足回りもエンジンも全くダメな車でした。