リンカーン・タウンカー フルサイズカー・フォード編
リンカーン1990年モデルとして、フォードのフルサイズカー、リンカーン・タウンカーがモデルチェンジを果たしました。当時でさえ、従来型のフルサイズカーの消滅は時間の問題といった空気が流れていただけに、それを否定したという意味で、それなりにインパクトのある出来事でした。
外観上の大きな特徴は、80年代後半以降のフォード車と同様、従来のゴシック調スタイルを捨て、シンプルなヨーロッパ調のラインを採用したことです。現在の目から見ると、それでも十分古き良きアメリカを感じさせるものですが、発売当時の印象は、角が取れたせいか、随分と軟弱に見えたもので、ニューモデルに対する嬉しさの反面、複雑な思いを抱いたものでした。
反面、エンジンは古いOHV5リッターV8と決別し、新たなOHC4.6リッターV8が装備されるなど、同時期に登場したGM製のフルサイズカーが、古いエンジンをそのまま引き継いでいたのとは対照的で、その辺りのスタンスが、GMのソレを短命に終わらせ、後にこの市場をフォードが独占するに至った要因と言えるでしょう。
ただ、この車も、アメリカの常で、サイズの割りには、間違っても居住性のいい車とは言えません。特に後部座席では、つま先が前席の下に上手く収まらないので、広大なレッグスペースの割りには、イマイチいい感じがしないのです。この辺りは、後部座席の居住性を考える上で非常に重要なポイントであるにも関わらず、特にアメリカではいい加減な車が目立ちます。
パワーシートが装備された車の場合、その傾向がより顕著になります。
逆に言えば、つま先さえ上手く収まれば、それ程広大なレッグルームは必要無いだけに、この辺りを解決できれば、かなりのダウンサイズが可能になるとも言えます。
そして96年モデルを最後に、GMがこのセグメントから撤退すると、フォードが市場を独占する様になりました。特にリムジンに於いては、タウンカー一色といった感がありました。
ところが、98年モデルとして登場した次期ニューモデルは・・・というと、その余りに醜悪なデザイン、そして代わり映えのしないメカには正直呆れたものでした。
現在、タウンカーといえば、リムジン専用と言っても差支えない位、街で見かけるのはリムジンばかりで、一般のドライバーが運転しているのは、きわめて稀と言えます。
これは、この手の車を好む世代(戦前生まれ)が高齢化して、市場として先細りしている事も大きな理由ですが、同時にこの醜悪なデザインも、少なからず影響していると思います。
競争に勝って市場を独占したものの、それを維持することが出来なかった・・・これは何時の世にも起こる、栄枯盛衰の一例なのかも知れません。
写真上:右がリンカーン・タウンカー、左が弟分のマーキュリー・グランドマーキスです。
かつては素っ気無く見えたデザインも、今こうやって見ると、上品で、意外と悪くない様です。
2008年8月、サンタモニカにて。
写真下;コチラは98年に登場した次のモデルです。鈍重を絵に描いた様なスタイルには、呆れたものでした。あれから10年経ちますが、印象は全く変わりません。
2005年9月、ビバリーヒルズにて。