フォード・カントリースクエア アメリカ製フルサイズワゴン
フォード写真上は、70年代のダウンサイジングを受ける前のフォード・カントリースクエアです。
ボディー側面に張られた木目パネルが目を引きますが、コレは昔、ステーションワゴンのボディーが木製だった頃の名残です。
元々トラックの延長として発展したステーションワゴンは、側面に木材が張られただけのシンプルなものでした。
車のボディーが当初のオープン型から、クローズド型に変わる過程で、一般の乗用車は鉄製なのに対し、ステーションワゴンは木製という関係が長く続きました。
生産性、メンテナンス性の関係で53年型のGM車を最後に、木製ボディーは姿を消しましたが、60年代後半以降、写真の様な木目パネルが、高級グレードに採用される様になりました。
考えてみると、50年代のアメリカは、とにかく目新しさを第一としていた時代で、60年代後半以降は、リンカーン・コンチネンタル・マークⅢの様な、少し古風でシックなデザインが持てはやされ始めた時代でした。その流れは、木製のステーションワゴンを消滅させ、そしてレトロ風の木目処理を生み出すというソレとも合致しています。
そして80年代後半から90年代前半は、アメリカ車がビニールトップ等、従来のデザインモチーフを放棄し、より日本車的なデザインを採用し始めた時期に当たりますが、その頃、同様に木目処理も姿を消していきました。
日本では、かつてワゴンというと、所謂ライトバンと混同され、何処と無く商用車のイメージが抜けず、実際に個人ユーザーが「乗用車」としてのワゴンを認知したのは、90年代に入ってからと言えます。
それに比べると、アメリカでは、30年代位から高級車としてのワゴンの地位が確立しており、フルサイズワゴンにタップリ荷物を積んで、家族で休暇に出かけるスタイルは、豊かなアメリカの象徴でもありました。
ただ、高級車とは言っても、あくまでも「労働階級」の高級車で、キャデラックやリンカーンにワゴンの設定はありませんでした。
現在アメリカでは、ステーションワゴンの人気は全く無く、フォードは92年モデルでフルサイズカー、フォードLTDクラウンビクトリア、マーキュリー・グランドマーキスをモデルチェンジした時、そのワゴン版であるフォード・カントリースクエア、マーキュリー・コロニーパークはモデルチェンジされる事無く、中型車では、最後まで残ったトーラスも2000年モデルにて、セダンは大幅なマイナーチェンジを受けたものの、ワゴンは殆ど手付かずの状態で継続販売され、2007年に生産中止となっています。
GMも、96年モデルを最後にフルサイズから撤退、97年、中型車ビュイック・センチュリーのモデルチェンジでワゴンの設定が無くなりました。
現在、北米では、セキュリティーの関係で、独立したトランクのあるセダンの方が好まれ、そして、より多くの荷物や人を運びたい人は、ミニバンを選ぶため、ある意味中途半端な存在になってしまったのでしょう。
ただ、昨今の景気の悪化から、ミニバンの様な大きな車が敬遠され、よりコンパクトなワゴンが見直される時代が来る可能性も、またゼロとは言えないと思います。
写真下:ビュイック・ロードマスター
GMのラインナップでは、伝統的にキャデラックにワゴンの設定は無く、最高級のワゴンはビュイックということになります。写真は90年代前半のもので、GMフルサイズカーの最終モデルに当たります。
このタイプは、とかくデザインが批判されたものですが、セダンに比べ、ワゴンの方が遥かに良く見えるせいか、ロードマスターの他にも、兄弟車のシボレー・カプリスも、比較的よく日本で見かけました。
この手のアメリカ製ワゴンの多くは、テールゲートだけでなく、写真の様にガラス部分だけを開閉出来る様になっていました。