GMフルサイズカー 80年代のダウンサイジング オールズモビル98
GM1979年の暮れ、イラン危機に端を発した第二次オイルショックによって、アメリカの自動車産業は、壊滅的な打撃を受けることになりました。クライスラーは実質的に経営が破たんし、フォードも深刻な経営不振に陥った中、比較的順調だったのがGMでした。
GMは、第一次オイルショック後、段階的に全車種にダウンサイジングを実施し、そればかりか、当時やっと北米での販売が安定しつつあった日本車にターゲットを合わせた小型車をぶつけてくるなど、「オイルショックはGMが裏で噛んでいる」と噂される程、上手く立ち回っていたのでした。
そして80年代初頭、長期化の様相を見せるイラン情勢から、今後当分の間原油価格は高値安定するという見方が支配的で、次世代の車は、一様に更なるダウンサイジングが実施されることになったのです。
コチラが70年代後半に登場したFRのオールズモビル98・・・実質的にシボレー・カプリス、ビュイック・エレクトラ等の兄弟車に当たりますが、フルサイズとはいえ、これでも先代より全長で30センチ、幅10センチと、随分とコンパクトになっています。
そして、コチラが80年代半ばに登場した、次世代フルサイズカーの、同じくオールズモビル98です。
従来の伸び伸びとしたスタイルからすると、かなり寸詰まりな印象は拭えません。ヘッドクリアランスを可能な限り取る為に、リアガラスをほぼ垂直にした「シビアノッチバック」は、80年代のアメリカで一般的なスタイルでした。
そして機械的にも、V6エンジンを横置きに配置しており、キャデラック以外にはV8が設定されていませんでした。
全長5m弱と、先代より60センチも縮小され、幅も10センチ縮小されています。
ただ、残念ながら発売された85年当時といえば、原油高も収まり、人々の嗜好が再び大型車に向き始めた時期でもあり、おまけに極端なダウンサイジングが、従来のユーザーにも戸惑いを与えたこともあり、余り高い評価を得ることは無く、90年に登場した次期モデルでは、再び大型化したものの、ソチラも湾岸危機~戦争による原油高、そして景気低迷の影響で、十分に評価されたとは言えません。
この事からも、先の「オイルショックはGMが噛んでいる」というのは、ガセであったと言わざるを得ません。
この車は、私が以前カナダにいた96年当時、結構修理に入ってきていたのですが、丁度良い大きさで、しかもフルサイズカー的な乗り味を維持していながらも、遥かに取り回しが楽で、無駄が無いとうもので、とてもスポーティーとは言えないものの、先代の「家を運転している」感覚からすると、随分と小気味良く感じたものでした・・・が、やはり、ユーザーに余り違和感を与えない様、もう少し時間をかけてダウンサイジングを施した方が賢明だったのではないか?というのが正直なところです。
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