クライスラー・フィフスアベニュー
クライスラー元々はクライスラー・ニューヨーカーの上級モデルとして登場したフィフスアベニューですが、この車も例外でなく、当初はニューヨーカーの上級モデルでしたが、後にニューヨーカーがFFのKカーベースに移項すると、この車は単独で「クライスラー:フィフスアベニュー」として生き残ることになりました。
フルサイズではないものの、クライスラーとしては、最後のFRシャシーを残した車で、他が軒並みKカーベースで、一頃ニューヨーカーまでもが4気筒のみになってしまった中、唯一5.2リッターV8エンジンを選択出来る車として、一定の支持を得ていました。
このシャシーは、かつてクライスラーの信用を地の底まで落としたプリマス・ヴォラーレ/ダッジ・アスペンの後継として開発されたものですが、アメリカの最も得意図するシンプルなFRに直6、V8という組み合わせは、十分にダウンサイズされた車体と相まって、それなりに支持されたものでした。
89年にこの車が生産中止になると、クライスラーのラインナップからFRが消え、その復活は、2004年に登場した300シリーズまで待たねばなりませんでした。
そして90年モデルからは、一足先にFF化されていたニューヨーカーの上級モデルとして、その名が復活しています。
今から20年ほど前、現在の様な再開発の始まる前のアメリカの街は、今より遥かに治安が悪く、通り一本隔ててガラリと雰囲気が変わることがよくありました。当時街を歩いていて、爆音を立てて走るカマロや、この手のクライスラー車が増えたら、治安が悪い証拠・・・・と、個人的に決めていました。
今から考えると、当時、生産中止からそれ程経っていなかった訳ですが、随分古典的に見えたのも、また事実でした。
あのアイアコッカ時代の過激なリストラによって、古典的なフルサイズカーから真っ先に撤退したクライスラーですが、インターミディエイトクラスで最後までFRを残したのは、逆にクライスラーだったのです。
10年前にはよく見かけたこの車も、今は本当に見かけなくなりました。しかも見かけたのは、サンフランシスコでも最も治安の悪い地域、テンダーロインでした。